ごろねこ倶楽部/まんがの部屋/あ行の作家

★青柳裕介★
 1944年生。1969年、「COM」の月例新人賞に『いきぬき』が入選してデビュー。「柳猫又」の変名も持つ。2001年没。 
 
※画像データ (左から)『陽炎』(青林堂・現代漫画家自選シリーズ30・1973年第1刷)、『男のブルース』(日本文芸社・ゴラクコミックス・1985年刊)、『さくらんぼと暴風圏』(奇想天外社・奇想天外コミックス・青柳裕介作品集1・1978年初版)、『あの頃唄ったあの歌は…』(奇想天外社・奇想天外コミックス・青柳裕介作品集2・1978年初版)、『ふるさと土佐の漁師まち』(奇想天外社・奇想天外コミックス・青柳裕介作品集3・1979年初版)、『初恋物語』(チクマ秀版社・劇画エトワール・2007年初版) 

★赤塚不二夫★ 
 1935年生。1956年、『嵐をこえて』(曙出版)でデビュー。2008年没。
 私が読んでいた赤塚作品は、何といっても
『おそ松くん』である。同時期の『まかせて長太』も読んでいたが、六つ児のインパクトと、イヤミ、チビ太、デカパン、ハタ坊などのキャラ立ちの点では、『おそ松くん』が空前絶後であったと思う。私が好きだったのはときどきイレギュラーで描く番外編で、チャップリンの『街の灯』を下敷きにした時代劇『イヤミはひとり風の中』などの作品である。その頃はどの雑誌を見ても赤塚作品が載っており、作品によってずいぶんと出来にはムラがあったが、総じて時流に乗った作家の強みで面白く読むことができた。『もーれつア太郎』『天才バカボン』は絶頂期の作品で、ニャロメやケムンパス、あるいはバカボンのパパなどのキャラをさらに生み出したことはすごいと思う。だが、『天才バカボン』の後半は、まんがのルールを壊していく形でギャグを作っており、これは私にはまったく笑えなかった。私にとって、1970年代末期以降の赤塚作品に見るべきものはない。というより、そこまで続いたことのほうが驚異的なのである。寿命の短さはギャグまんが家の宿命だが、それでもフジオ・プロの支えもあって20年近く第一線で活躍していたのだ。今後も『おそ松くん』『天才バカボン』『ひみつのアッコちゃん』などは何度も復活する作品だと思うが、継承されていくのはオーソドックスな笑いであり、赤塚が身を削って表現していたギャグは伝説となるだろう。それでも、赤塚の生み出したキャラたちと、赤塚不二夫というキャラクターが消えることはない。 
 
※画像データ (左から)『嵐をこえて/嵐の波止場』(小学館クリエイティブ・2006年復刻)、『チビ太くん』(コダマプレス・ダイヤモンドコミックス・1966年初版)、『赤塚不二夫のマンガ大学院(上)』(集英社ジャンプコミックス・1969年初版)、『天才バカボンのおやじ』(実業之日本社・ホリデーコミックス・1970年初版)、『ユー・ラブ・ミー君』(双葉社・パワァコミックス・1975年初版)、『ひみつのアッコちゃん(1)』(アース出版局・漫画名作館・1994年初版) 

★秋竜山★  
 1942年生。(コメント予定) 
※画像データ (左から)『あァ!乱痴気人間』(青林堂・現代漫画家自選シリーズB・1971年初版)、『竜山のふざけた世界』(朝日ソノラマ・サンコミックス・1970年2版)、『Oh☆ジャリーズ』(実業之日本社・ホリデーコミックス・1970年初版)、『ジョウダン親子』(芳文社・芳文社コミックス・1981年初版))、『珍日本最初の日・アッというまの出来事』(K.K.ダイナミックセラーズ・1982年初版)、『秋竜山の1千枚』(東京スポーツ新聞社・1976年刊)) 

★秋本治★ 
 1952年生。1976年、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が「ヤングジャンプ賞」に入選し、「週刊少年ジャンプ」に掲載されデビューする。投稿の際のペンネームは「岩森章太郎改め山止たつひこ」であったが、掲載時は「山止たつひこ」名であった。その読み切り作品を第1話として、連載が始まるが、短期の予定だったためか、「山止たつひこ」名義のままで連載を続け、2年後の100話の際に「秋本治」名になった。『こちら葛飾区亀有公園前派出所』は記録的な連載期間となり、すでに35年を超えた。 
 
※画像データ (左から)『平和への弾痕』(集英社・1991年第10刷)、『新元禄太平記』(集英社・1991年第8刷)、『白バイファイター夢之丞変化』(集英社・1989年第9刷)、『花田留吉七転八倒』(集英社・1996年第1刷)、『Mr.Cliceミスタークリス(5)』(集英社・2003年第1刷)、『秋本治SF短編集』(集英社・2011年第1刷) 

 ★あさのりじ★
 1938年生。2000年没。 
 
※画像データ (左から)『発明ソン太(1)』(サン出版・コミックペット・1981年刊)、『発明ソン太[完全版](下)』(マンガショップ・2010年刊)、『光速エスパー』(マンガショップ・2005年刊)、『ランデヴーコミック(2)光速エスパー総集編』(みのり書房・「月刊OUT」1978年6月20日号増刊)の口絵、『まんが版入門百科・まんが教室』(集英社・1971年刊)、『クイズなぞなぞシリーズ・いじわるクイズ教室』(曙出版・1972年刊) 

★あすなひろし★ 
1941年生。1959年『まぼろしの騎士』(「少女クラブ」)でデビュー。「臼杵三郎」というペンネームを使った作品もある。2001年没。
 私が最初に好きになったあすな作品は「COM」1968年1月号に掲載された
『300,000km./sec.』。その硬質なイラスト・タッチの絵と叙情的なストーリーの虜となった。この作品は後にブロンズ社の『心中ゲーム』に収録されたが、同単行本の表紙には絵がないので、「COM』掲載時の表紙絵を貼っておく。この頃、虫プロからあすなの単行本が2冊刊行され、私をますます魅了した。すなわち少女まんがを収録した『サマーフィールド』と少年・青年まんがを収録した『からじしぼたん』である。当時、あすなは映画タイトルを使用した作品を「少年ジャンプ」に発表しており、その中でも『からじしぼたん』は一番の傑作だと思う。その一連の作品の中では『とうちゃんのかわいいおヨメさん』で第18回小学館漫画賞を受賞する。また唯一の長編まんが『赤毛の狼』を発表したのも「少年ジャンプ」である。代表作としては『青い空を,白い雲がかけてった』『風と海とサブ』シリーズがあるが、私が好きなシリーズとしては青年まんがの『哀しい人々』シリーズを挙げておこう。 
 
 ※画像データ (左から)『300,000km./sec.』(「COM」掲載時の扉絵)、『行ってしまった日々』(主婦の友社・ロマンコミック自選全集・1978年初版)、『サマーフィールド』(虫プロ・グランドコミックス・1970年初版)、『からじしぼたん』(虫プロ・別冊COMコミック・1973年刊行)、『ぼくのとうちゃん』(汐文社・ホームコミックス・1976年初版)、『風と海とサブ(1)』(秋田書店・少年チャンピオンコミックス・1980年初版) 
Topic   あすなひろし所有作品リスト  ※私が所有している作品のリストです。
書名 発行年月日 出版社 収録作品 備考
リナ 1961.3.1 講談社 赤い石のひとみ 「少女クラブ」1961年3月号別冊付録
リナ 1961.4.1 講談社 ちいさな橋のうえで 「少女クラブ」1961年4月号別冊付録
サマーフィールド 1970.11.15 虫プロ商事 木枯/なみだ色の空/スペードの女王/ボンソワール・パリ/雪とバラの詩/雪の童話/霧とワルグスの伝説/四月の雨/草の海に沈んだ追想/白い花飾りの帽子/いたずらな夏/きのうのひとりぼっち/リリオム/わたしの心はバイオリン/サマーフィールドから来た少年 GRAND COMICS
からじしぼたん 1973.3.30 虫プロ商事 からじしぼたん/ぼくのとうちゃん/青い麦萌える/武蔵野心中/寒いから早く殺して/私が殺した女/走れ!ボロ/とうちゃんのかわいいおヨメさん/山ゆかば! 別冊COMコミック
あすなひろし集・心中ゲーム 1973.11.10 ブロンズ社 心中ゲーム/日時計/再会/テールランプ/300、000q/sec./ジョージ・ワシントンを射った男/戦士は無名でなければならない/ぼくのとうちゃん/巣立ち/赤いトマト/鳥の木 もう一つの劇画世界
ぼくのとうちゃん 1976.3.1 ホーム社 ぼくのとうちゃん/山ゆかば/5月の5ひき/過ぎ去りし日の/らくがき/ユウちゃんのネコ/とうちゃんのかわいいおヨメさん ホーム・コミックス
サマーフィールド 1976.12.25 朝日ソノラマ (『リリオム』以外は虫プロ版と同じ収録作品) サン・コミックス
哀しい人々 1977.3.20 朝日ソノラマ 哀しい人々/流浪哀歌/ラメのスウちゃん/心中ゲーム/とても、心さびしく/亭主泥棒/歌を消す者/電話殺人 サン・コミックス
哀しい人々−2 ソクラテスの殺人 1978.8.31 朝日ソノラマ 童話ソクラテスの殺人/幻のローズマリィ/前科者/武蔵野心中/かわいい女/けさらんぱさらん/親不孝通り サン・コミックス
哀しい人々3 家族日誌 青狼記 1980.2.25 朝日ソノラマ 半信半戯/しあわせの青い鳥/家族日誌/遠い歓声/轟々と…/ただそれだけの日々…/青狼記 サン・コミックス
美しき5月の風の中に 1977.5.20 朝日ソノラマ まいごのブー/かもめ/夏の階段/海へ行こうよ!/行ってしまった日/赤いトマト/緑を,ながして/陽気なひとりぼっち/遠い伝説/走れ!ボロ/海に沈んだ秋/わすれもの/悲しいひとみの少年/ユウちゃんのネコ/冬のライオン/悪いおんな/冬のかげろう/雪あかり/風のささやき/らくがき/白い林檎の花/5月の5ひき/美しき5月の風の中に サン・コミックス
ぼくのとうちゃん 1978.3.31 朝日ソノラマ ぼくのとうちゃん/外人部隊/とうちゃんのかわいいおヨメさん/山ゆかば サン・コミックス
青い空を,白い雲がかけてった(1) 1978.6.10 秋田書店 青い空を、白い雲がかけてった/風を見た日/いつか見た遠い空/あしたも晴れるか/ぼくの心を風が吹く/日だまりの中で 少年チャンピオン・コミックス
青い空を,白い雲がかけてった(2) 1979.5.25 秋田書店 春が見えた朝/いま青春の風の中/ぼくのオレンジ色/ビューティフルサンデー/八月のツトム/きみの心に降る雪は/春を待ちながら 少年チャンピオン・コミックス
青い空を,白い雲がかけてった(3) 1981.2.15 秋田書店 バーボンの香りの中で/さりげないあした/青葉繁れる/童話/十月のあした/青空にタッチ!/あしたになれば 少年チャンピオン・コミックス
行ってしまった日々 1978.7.1 主婦の友社 海に沈んだ秋/5月の5ひき/風のささやき/夏の階段/行ってしまった日/遠い伝説/まいごのブー/悲しいひとみの少年/白い林檎の花/冬のライオン/ニーノとフランソワ/サマーフィールドから来た少年/白い花飾りの帽子/いたずらな夏/草の海に沈んだ追想/すぎ去りし日の ロマンコミック自選全集7
風と海とサブ(1) 1980.10.5 秋田書店 風と海とサブ 少年チャンピオン・コミックス
風と海とサブ(2) 1980.11.5 秋田書店 風と海とサブ 少年チャンピオン・コミックス
かたばみ抄 1982.6.28 朝日ソノラマ かたばみ抄/悪夢症候群/懐かしいうた/夏草/六頭の白い馬/詩が聞こえる サン・コミックス
サムの大空 1982.12.20 秋田書店 サムの大空/あしたも風の中/ぼくたちの大砲 少年チャンピオン・コミックス
白い星座 1983.5.25 朝日ソノラマ 白い星座/野分/クリスマス キャロル/さざんか/すぎ去りし日の サン・コミックス
白い記憶 1983.11.15 朝日ソノラマ 白い記憶(叔父さんが来た日、ブリキの汽車、ゆきのおと、ガニマタの魔法使い、宇島の沖)/桔梗/おお!大戦争/約束 サン・コミックス
ぼくのとうちゃん 1999.7.9 さくら出版 からじしぼたん/ぼくのとうちゃん/とうちゃんのかわいいおヨメさん/山ゆかば さくらコミックス愛蔵版
哀しい人々1 1999.8.9 さくら出版 哀しい人々/流浪哀歌/ラメのスウちゃん/心中ゲーム/とても、心さびしく/歌を消す者/電話殺人/家族日誌 さくらコミックス愛蔵版
あすなひろし作品選集1 2002.12.30 あすなひろし追悼公式サイト いつか見た青い空/源平じいさん/八月のツトム 少年漫画(1)
あすなひろし作品選集2 2003.5.5 あすなひろし追悼公式サイト 白い霧の物語/ビビディバビデ・ブー/雪の花びら 少女漫画(1)
あすなひろし作品選集3 2003.8.16 あすなひろし追悼公式サイト 初恋 白い少年/ジョージ・ワシントンを射った男 青年漫画(1)
あすなひろし作品選集4 2003.12.30 あすなひろし追悼公式サイト 日だまりの中で/ぼくのオレンジ色/さりげないあした/童話 少年漫画(2)
あすなひろし作品選集5 2003.12.30 あすなひろし追悼公式サイト 翔ぶ,/童話ソクラテスの殺人/轟々と/やさしい夏 青年漫画(2)
青い空を,白い雲がかけてった 2004.7.7 エンターブレイン 青い空を,白い雲がかけてった/あしたも晴れるか/ぼくの心を風が吹く/日だまりの中で/ビューティフルサンデー/きみの心に降る雪は/青葉繁れる/あしたになれば ビーム・コミックス
青い空を,白い雲がかけてった・完全版(上) 2008.3.6 エンターブレイン 青い空を,白い雲がかけてった/風を見た日/いつか見た遠い空/あしたも晴れるか/ぼくの心を風が吹く/日だまりの中で/春が見えた朝/いま青春の風の中/ぼくのオレンジ色/ビューティフル・サンデー ビーム・コミックス文庫
青い空を,白い雲がかけてった・完全版(下) 2008.3.6 エンターブレイン 八月のツトム/きみの心に降る雪は/春を待ちながら/バーボンの香りの中で/さりげないあした/青葉繁れる/青空にタッチ!/十月のあした/童話/源平じいさん…/あしたになれば ビーム・コミックス文庫
いつも春のよう 2004.7.7 エンターブレイン いつも春のよう1〜3/童話ソクラテスの殺人/亭主泥棒/けさらんぱさらん/かわいいおんな/ラメのスウちゃん/幻のローズマリィ ビーム・コミックス
いつも春のよう 2008.4.2 エンターブレイン いつも春のよう1〜3/童話ソクラテスの殺人/亭主泥棒/けさらんぱさらん/かわいいおんな/ラメのスウちゃん/幻のローズマリィ/ゆめの終わり/ながれうた ビームコミックス文庫
あすなひろし作品選集6 2004.12.29 あすなひろし追悼公式サイト 星空のかなたに 少女漫画(2)
あすなひろし作品選集7 2004.12.29 あすなひろし追悼公式サイト 林檎も匂わない/ほあ−ほあ/東回帰線KUNUQNU 後期作品群(1)
あすなひろし作品選集8 2005.8.14 あすなひろし追悼公式サイト 5月の5ひき/赤いシャツを着た人魚/夏の階段/海に沈んだ秋/トトの朝/恋の木/おかしな日曜日/遠い伝説/ゴンの大冒険/雪あかり/らくがき 少女漫画(3)
あすなひろし作品選集9 2005.8.14 あすなひろし追悼公式サイト 無法松の一生(第1章・夏/第2章・祭り・あばれ太鼓/第3章・秋) 名作漫画(1)
あすなひろし作品選集10 2006.8.12 あすなひろし追悼公式サイト ゆめの終わり/ながれうた/柿の木坂の家 青年漫画(3)
あすなひろし作品選集11 2006.12.31 あすなひろし追悼公式サイト 青狼記/夏草 青年漫画(4)
嵐が丘 2006.2.28 コンテンツワークス 嵐が丘 原作・エミリー・ブロンテ
脚色・さわさかえ
みどりの花 2006.9.14 ブッキング みどりの花
呪啼夢 2007.8.6 チクマ秀版社 第壱部・邂逅編・第一夜・イヴの館(前・後)/第二夜・イヴの幻野(前・後)/第三夜・イヴの褥(前・中・後)/第四夜・あやかしのテロリスト(壱・弐・参)/第五夜・新宿情死考/第六夜・通夜化粧/第七夜・風の彷徨/第八夜・紅蓮燈籠(前・後)/第九夜・女霊街道/第十夜・幻想方程式 作・宮田雪
あすなひろし作品選集12 2007.8.19 あすなひろし追悼公式サイト オネーギン/流れ星,ひとつ 少女漫画(4)
あすなひろし作品選集13 2007.12.31 あすなひろし追悼公式サイト 遠い歓声/春雷 青年漫画(5)
林檎も匂わない 2008.4.2 エンターブレイン プラスチック昆虫記/300,000km./sec./スウと,いう名の童話/ジョージ・ワシントンを射った男/93時間/さいごの一葉/妻の肖像/山ゆかば/歌を消す者/林檎も匂わない ビームコミックス文庫
あすなひろし作品選集14 2008.8.17 あすなひろし追悼公式サイト さざんかの咲くころ/おとうの貝/秋風のうた 少女漫画(5)
あすなひろし作品選集15 2008.12.30 あすなひろし追悼公式サイト 北極光 名作漫画(2)
リチャード三世 2009.12.31 あすなひろし普及会 リチャード三世/水色のビアンカ あすなひろし普及会1
砂漠の鬼将軍 2011.12.31 あすなひろし企画室 砂漠の鬼将軍 あすなひろしセレクション1
アンソロジー
劇画タカラヅカ名作10選PART3 1977.12.1 主婦と生活社 虹のオルゴール工場 原作・高木史朗
炎の街に生きる 1984.1.25 ほるぷ出版 山ゆかば/赤いトマト ほるぷ平和漫画シリーズ11
宮澤賢治・漫画館1 1985.8.15 潮出版社 セロ弾きのゴーシュ
60年代傑作集マンガ黄金時代 1986.6.25 文藝春秋社 武蔵野心中 文春文庫ビジュアル版
少女マンガ大全集 1988.9.10 文藝春秋社 雪の童話 文春文庫ビジュアル版
ファンキーパーティ 1989.2.28 東京三世社 無題(初出誌には『INVADER(侵略者)』との題がある) 超ショートショートコミック大傑作集
宮澤賢治・漫画館3 1996.10.1 潮出版社 よだかの星
その他
火星の戦士 蜘蛛の王 1972.10.31 早川書房 マイケル・ムアコックの小説のカバー絵とイラスト ハヤカワ文庫SF
自家製本
雪の花びら 雪の花びら/天使の星くず(全4回)/わたしのジャック/キャシーといっしょに/星空のかなたに(全4回)/クリスマスばんざい/7月の騎士
むらさきのゆめ オレンジ・ブロッサム・スペシャル/むらさきのゆめ/リムのおっちょこちょい/拝啓ジュリーです!/ブローニュの少女/ジョニーとこんばんは!/水色の風の中で/悲しみよこんにちは/おお!大戦争/北極光(2回分)
赤毛の狼 赤毛の狼(全4回)
心中ゲーム 心中ゲーム/CRY WOLF/日時計/トムとサム/荒南風/テールランプ/とても,心さびしく/銃声 白い秋
哀しい人々 哀しい人々/前科者/親不孝通り/家族日誌/轟々と/翔ぶ,/アオよ・アオよ/武蔵野心中/ただそれだけの日々/半信半戯
北の海 北の海(単行本では『約束』と改題)/山ゆかば!
砂漠の鬼将軍 砂漠の鬼将軍/外人部隊/からじしぼたん
さよなら,ぼくのともだち さよなら,ぼくのともだち/セロ弾きのゴーシュ/よだかの星
青い空を,白い雲がかけてった ぼくの心を風が吹く/日だまりの中で/童話/青空にタッチ!/風と海とサブ・ふりかえればなつかしい風/やさしい風/夏の予感
桔梗 桔梗/青狼記/六頭の白い馬/詩が聞こえる
かたばみ抄 かたばみ抄(前編・後編)/夏草(青狼記・第二部)/実録すかんちん物語/野分/夢の中
黒神楽村雨囃子 黒神楽村雨囃子/フクという名の犬/オンディーヌ(水野英子との合作)/ゴンの大冒険/冬のライオン/ユウちゃんのネコ/さよなら,ぼくのともだち
雑誌(単行本未収録作のみ)
COM、少年ジャンプ、COMICばく、少年キング、りぼんコミックス、希望の友、他 その日,ノース=ビルは,雪/西部の唄/難破船(絵・川本コオ)/スウという名の童話/けんか村の茂/あすな村きちがい部落/雲ゆく/巣立ち/獣の熱い息/ながれ星,ひとつ(おどり子人形)/さいごの一葉/妻の肖像/むらさきの日々/三つの恋の物語・第3話・パートナー/リリオム/カンタベリーの幽霊/酒天童子/チップス先生さようなら/実録すかんちん物語/妖精の白い花/そこに泣いてるぼくがいた/赤と黒/赤と黒〈第二部〉

 ★吾妻ひでお★
 1950年生。1969年、『リングサイド・クレージー』(「まんが王」)でデビュー。1989年に失踪し、作品を発表しない時期があり、その後復帰するも98年にアルコール中毒で入院。その顛末を『失踪日記』にまとめ、再々復帰した。2019年没。
 吾妻ひでおの
『二日酔いダンディー』『ふたりと5人』といったギャグまんがを特別面白いと思ったことはなかったが、SF小説や映画のパロディを多く描くようになると、私の興味を惹いた。元ネタを知らないと笑えない作り方が、SFファンの優越感をくすぐったことは間違いないが、的確に元ネタの急所をパロディにするセンスに優れていたと思う。『不条理日記』『パラレル狂室』『メチル・メタフィジーク』などの作品である。もう一つの特徴には、ロリコン趣味風な少女の絵があって、この傾向は多くの亜流を生み出してエロまんがの一つの路線を作ったと思われる。しかし、本家の吾妻作品はぎりぎりエロに堕することは踏みとどまっていたようだ。その代表作は『ななこSOS』である。SFパロディは再生産を繰り返すうちに次第にナンセンス度が高くなってわけがわからないものになり、ロリコン趣味の絵柄も亜流の中で鮮度が失われていったと思う。ただ、それが、私という読者の限界なのか、吾妻の限界なのかはわからない。ただ、『失踪日記』は異常体験を、昔と変わらぬ淡々とした視点で描くところに新境地が生まれた。必ずしも異常な体験を求める必要はないが、停滞気味なエッセイまんがというジャンルに、新風を送り込んでくれることを期待していた。 
 
※画像データ (左から)『不条理日記』(奇想天外社・奇想天外コミックス・1979年初版)、『オリンポスのポロン(1)』(秋田書店・プリンセスコミックス・1979年初版)、『ざ・色っぷる』(奇想天外社・奇想天外コミックス・吾妻ひでお作品集(4)・1980年初版)、『ハイパードール』(秋田書店・プレイコミックスシリーズ・1982年初版)、『ななこSOS(4)』(光文社・ジャストコミック増刊・1984年刊)、『ひでお童話集』(双葉社・アクションコミックス・1984年初版) 

★池上遼一★ 
 1944年生。1961年、日の丸文庫の貸本誌「魔像」に短編が採用され、1966年、「ガロ」に『罪の意識』が掲載される。その縁でしばらくは水木しげるのアシスタントをしながら、自作を描いていた。 
※画像データ (左から)『おえんの恋』(青林堂・現代漫画家自選シリーズ・1973年第1刷)、『ひとりぼっちのリン(1)』(講談社・1973年第1刷)、『土中に咲いた白い花』(若木書房・1977年第2刷)、『星雲児(1)』(小学館・1983年第1刷)、『男組(1)』(小学館・1990年第1刷)、『今日子(2)』(小学館・1996年第1刷) 

★石井いさみ★ 
 1941年生。1957年、『たけうま兄弟』(「少年クラブ」)でデビュー。
 石井いさみというと、不良じみた少年を主人公とするスポーツものが多かったような気がする。下の画像の左の3作品が、それぞれ野球、サッカー、バスケット・ボールを題材にしている。何かしら不幸な生い立ちから世をすねている少年の純情を描くのがうまかった。
『モーレツ!巨人』と同様に梶原一騎原作の『ケンカの聖書』、あるいは『高校悪名伝』『四角い青空』といったより不良性を強くした作品でも、それは変わらない気がする。当初は、そのパターンで始まった『750ライダー』は、長い連載期間の間に不良性が払拭されて、永遠に時が進まない高校2年生の日記的な内容に変わってしまった。人物の顔もまるで別人になっている。その途中頃から私は石井作品をあまり読まなくなってしまったのだが、いつかは『750ライダー』をきちんと読みたいと思っている。私がもっとも印象に残っているのは、「COM」に連載していた『愛のスケッチ』という詩にイラストをつけた作品で、私のようなアマチュアが同人誌に描くときのお手本のような作品だった。石井作品には『ごろまき健』などラストを詩的に締める作品も多いと思うが、ある意味、詩をまんがにしたような『ヘアピン・ラブ』『あいつの詩』といった短編が私は一番好きだった。 
 
※画像データ (左から)『モーレツ!巨人』(報知新聞社・1970年初版)、『くたばれ!! 涙くん(1)』(秋田書店・サンデーコミックス・1979年7版)、『ごろまき健』(朝日ソノラマ・サンコミックス・1973年初版)、『青い鳥の伝説(1)』(朝日ソノラマ・サンコミックス・1972年初版)、『750(ナナハン)ライダー(9)』(秋田書店・チャンピオンコミックス・1977年初版)、『750(ナナハン)ロック』(こだま出版・ECコミックス・1980年2刷) 

★石井隆★ 
 1946年生。1970年に「事件劇画」誌でデビュー。第1作品集『淫花地獄』は、「出木英紀」名義であった。『天使のはらわた』がシリーズ映画化され、2作目『天使のはらわた/赤い教室』(1979年)では脚本を担当、『天使のはらわた/赤い眩暈』(1988年)で監督デビューする。以後、映画界を中心に活動している。 
 
※画像データ (左から)『石井隆作品集・名美』(立風書房・1977年第1刷)、『象牙の悪魔(1)』(竹書房・1984年初版)、『おんなの街』(少年画報社・1981年初版)、『黒の天使(3)』(少年画報社・1982年初版)、『横須賀ロック』(立風書房・1979年第1刷)、『甘い夜』(大都社・1991年初版) 

 ★石川球太★
 1940年生。1955年、「漫画少年」の『珍消防隊』でデビュー。初期には「石川輝義」名義の作品がある。また、後に「石川球人」と改名している。 
 
※画像データ (左から)『ななし野ものがたり』(アップルBOXクリエート・1995年復刻)、『動物記』(朝日ソノラマ・サンコミックス・1968年初版)、『牙王(1)』(戸川幸夫原作・大都社・スターコミックス・1984年初版)、『荒野の呼び声(1)』(ジャック・ロンドン原作・講談社・TVマガジンKC・1977年第1刷)、『ツンドラ狼物語・黒チビちゃんU』(講談社・KCDX・1991年第1刷)、『巨人獣(1)』(大創出版・ダイソーコミックシリーズ・2002年刊) 

★石ノ森章太郎★ 
 1938年生。1955年『二級天使』(「漫画少年」)でデビュー。初期には赤塚不二夫、水野英子との合作で「U・マイア」、赤塚との合作で「いずみあすか・石塚不二太郎」、個人で「南汀子」というペンネームを使ったこともある。1986年、「石森章太郎」から改名。1998年没。
 私が「少年」を初めて買ったとき、連載していた石森作品は
『秘境三千キロ』だった。多分それが一番最初に読んだ石森作品だと思う。とくに記憶があるのが、東宝の映画をまんが化した『マタンゴ』という短篇で、これは長いこと再読する機会を得られなかった。まんが少年であった私は、1965年に石森の『マンガ家入門』という本を読み、熱烈な石森ファンになった。同書で石森が自注をつけた『龍神沼』に、おそらくまんがファンのだれもがそうであったように感銘を受けたのである。翌年刊行の『続・マンガ家入門』収録の『夜は千の目をもっている』も同様である。この二作と『あかんべえ天使』が、今でも石森作品のベスト3である。緻密なストーリー構成と情感のある絵は何度読んでも素晴らしい。ちょうどその頃、新書判のまんが単行本が刊行され始め、その牽引役が石森作品であった。コダマプレスの『ミュータント・サブ』『赤いトナカイ』『幽霊船』、秋田書店の『サイボーグ009』『ボンボン』、朝日ソノラマの『黒い風』『竜神沼』『メゾンZ』、虫プロの『気ンなるやつら』『SΠ(エスパイ)』など、怒濤の石森作品刊行ラッシュに、私の熱中度はますますヒート・アップしていった。「COM」に連載した『ジュン』の斬新な内容にも驚かされた『幻魔大戦』『佐武と市捕物控』になると、劇画タッチを取り入れ始めて絵の瑞々しさは失われたが、石森のまんが表現が着実に深化していくのがわかった。その集大成が『リュウの道』だろう。が、1971年の『仮面ライダー』から石森は明らかに変わった。本人が発表媒体を雑誌から電波に変えたというように、石森作品の中でまんがが副次的な存在になってしまったのである。技法の実験というよりは手抜き、大ゴマばかりが目につき、ストーリーはひどく薄味になった。その後にも『さんだらぼっち』などの好きな作品はあるが、私と石森作品との蜜月時代は6年ほどで終わりを告げたのである。 
 
※画像データ (左から)『黒い風』(東邦漫画出版・1962年刊)、『ミュータント・サブ』(コダマプレス・ダイヤモンドコミックス・1966年初版)、『気ンなるやつら』(虫プロ・虫コミックス・1968年初版)、『火の鳥風太郎・二級天使』(桃源社・1976年初版)、『あかんべえ天使』(朝日ソノラマ・サンコミックス・1968年初版)、『あしたのあさは星の上』(すばる書房・1977年復刊)

★板井れんたろう★ 
 1936年生。1955年、描き下ろしの単行本『関が原の戦い』(曙出版)でデビュー。初期には「板井たけお、板井太郎、板井練太郎、板井レンタロー」名義の作品がある。2017年没。
 板井といえば、私には何といっても
『ポテト大将』である。ちょうど「少年」を読み始めた頃、連載中であった。私の関心はアトムや鉄人、ギャグでは『ストップ!にいちゃん』のほうにあり、じつは『ポテト大将』とか、吉田ゆたかの『がらくたくん』とかは、刺身のつまみたいな存在であった。だが、不思議なもので、歳をとるとこうした作品への懐かしさが強くなってくる。まるで失われた自分の子供時代がそこにあるかのような郷愁を感じるのである。板井は手塚治虫の『風之進がんばる!』の最終回をを代筆しているように、初期にはストーリーまんがを描いていた。画像に挙げた『火炎人間』には、他に『大空のぼうけん』『特急探偵』が収録されているが、SFやミステリーの作品が多かったらしい。私はそのへんの作品をリアルタイムでは読んでいない。そこに必ず登場する三枚目のキャラがポテト大将のキャラである。三枚目キャラを主役に据えてから板井のまんがはヒットしたが、意外とストーリー性があり、ポテト大将も『スリルくん』もカッコいい奴である。当時の子供にとって身近でありながら憧れる夢の要素も入っていた。そこが魅力である。板井作品としては、もう少し後の『おらあグズラだど』『ドカチン』『ドタマジン太』のほうがヒット作になるかも知れないが、私にとっては『ポテト大将』と『スリルくん』に尽きる。 
 
※画像データ (左から)『火炎人間』(アップルBOXクリエート・板井れんたろう作品集(1)・2001年復刻)、『スーパー太郎』(「幼年クラブ」1957年12月号付録)、『アキレ太くん』(「冒険王」1965年12月号別冊付録)、『ポテト大将』(虫プロ・虫コミックス・1969年初版)、『スリルくん』(ペップ出版・ペップおもしろまんがランド・1989年初版)、『おらあグズラだど(1)』(汐文社・汐文社ホームコミックス・1976年初版) 

★板橋しゅうほう★
 1954年生。京都芸大在学中にまんが研究会を設立し、「黒煮込」という同人誌に描いたSFまんが『ヒドラグリーン』がきっかけで、みのり書房の「オカルト時代」にイラストを描くようになる。1977年から「月刊OUT」に連載した『ペイルココーン』がまんがのデビュー作。ウェブコミックでは「SYUFO」名を使っている。
 
※画像データ (左から)『ラッキールートへランナウェイ』(集英社・1984年第1刷)、『アイ・シティ(1)』(双葉社・1985年第1刷)、『セブンブリッジ(1)』(潮出版社・1986年発行)、『パパキングママジェット』(東京三世社・1984年初版)、『ペイルココーン』(東京三世社・1983年3版)、『シルベスター』(大都社・1991年初版) 

★一條裕子★ 
 1967年生。1992年にデビュー。(以下コメント予定) 
 
※画像データ (左から)『わさび(2)』(小学館・ビッグスピリッツコミックススペシャル・1996年初版)、『末広町35番地』(マガジンハウス・マグコミックス・1997年初版)、『静かの海』(ぶんか社・1998年初版)、『2組のお友達・橙の本』(小学館・ビッグスピリッツコミックススペシャル・1999年初版)、『犬あそび』(小学館・ビッグスピリッツコミックススペシャル・2000年初版)、『阿房列車(1号)』(内田百闌エ作・小学館・2009年初版) 

★一ノ関圭★ 
 1950年生。1975年、『らんぷの下』が第14回ビッグコミック賞を受賞してデビュー。そのときのペンネームは「夢屋日の市」であった。
 1975年は、私が商業誌の片隅に作品を発表した年でもあり、他の賞を気にしていたが、何といっても一番の新人賞は、この「ビッグコミック賞」であった。「ビッグコミック賞」の応募資格はプロ・アマを問わず、一ノ関以前にはただ一人しか受賞していないという最難関の賞である(佳作などはいた)。応募規定に50頁以内(50頁前後だったかも知れない)の作品とあったが、何と一ノ関の『らんぷの下』は70頁もある。規定など無視してしまう自信もすごいが、確かに素晴らしい作品であった。ただ、受賞作の掲載は、頁数が多いために2分の1に縮小されていた。編集部の狭量が実に残念であった。資料と想像を駆使して描く『らんぷの下』など実在の人物を題材にした作品は、一ノ関の得意とするジャンルだが、比肩すべき作家がいないほどに群を抜いた巧さである。一ノ関はデビューして7年の間に15編の作品しか描いていないが、
『茶箱広重』は江戸時代へと興味が向いた作者の力作である。私としては『寒雷』などのミステリー小品も捨て難く、1986年に4年ぶりに発表した『ほっぺたの時間』は社会問題を先取りした題材を細やかな心理描写で描き、一ノ関の新しい方向となるかと期待した。だが、それを最後に一ノ関はまんが作品を発表しなくなってしまった。江戸時代を正確に描写する絵本などを描き、まんがには二度と戻ってこないようにも思えたが、2003年に久々の新作『鼻紙写楽』を発表した。その続編もなかなか進まないが、今後もぜひ描き続けてほしい作家である。 
 
※画像データ (左から)『らんぷの下』(小学館・ビッグコミックス・ビッグコミック賞作家作品集@・1980年初版)、『裸のお百』(小学館・ビッグコミックス・ビッグコミック賞作家作品集A・1980年初版)、『茶箱広重』(小学館・ビッグコミックス・ビッグコミック賞作家作品集D・1983年2版)、『江戸のあかり−ナタネ油の旅と都市の夜−』(岩波書店・文・塚本学・2001年2刷)、『夢の江戸歌舞伎』(岩波書店・文・服部幸雄・2002年3刷)、『らんぷの下』(一ノ関圭作品集1・小学館・1992年第1刷) 

★樹なつみ★ 
 1960年生。1979年『めぐみちゃんに捧げるコメディ』(「LaLa」)でデビュー。
 私が樹なつみのファンになったのはかなり遅い。1992年に連載が始まった
『八雲立つ』の単行本がすでに2、3巻まで刊行されていた頃である。前々から星雲賞を受賞した『OZ』という『オズの魔法使い』をモチーフにしたSF作品が気になっていたが、表紙を見ると、どうも好みの絵でないような気がして読まなかった。だが、伝奇SFの『八雲立つ』が刊行され、それも面白そうだし、読んでみようかと思ったのである。まず、試しに1巻ものの『エキセントリック・シティ』を読んでみた。話は面白く、絵も見づらくはなかった。むしろすっきりとしたタッチは少女まんがの中でも見やすいほうである。そこで『OZ』を読むと、ラストで思わず涙がにじんでしまった(笑)。久々に感動するSFまんがだった。これが私のベスト作品である。それからはもう次々と樹作品を追いかけた。『朱鷺色三角』とその続編『パッション・パレード』はSF要素もあり面白く読めたが、意外なことに苦手かと思っていたファッショナブル・ロマン『マルチェロ物語』『花咲ける青少年』はもっと面白かった。樹は、魅力的なキャラクターとその掛け合いを描くのが巧いが、長編作でも話の一貫性に揺るぎないのがすごい。完結までリアルタイムで追いかけた『八雲立つ』『獣王星』は新刊が待ち遠しかった。ただ、初期作品集の『男と女に捧げるコメディ』『トランシルヴァニア・アップル』はさすがに読むのがつらい(笑)。青年誌に描いた『暁の息子』『デーモン聖典(サクリード)』『ヴァムピール』など、このところ私にはちょっと物足りなく思える作品が続くのが気がかりである。 
 
※画像データ (左から)『男と女に捧げるコメディ』(白泉社・花とゆめコミックス・1981年初版)、『トランシルヴァニア・アップル』(白泉社・花とゆめコミックス・1983年初版)、『マルチェロ物語(ストーリア)(4)』(白泉社・花とゆめコミックス・1984年初版)、『朱鷺色三角(トライアングル)(1)』(白泉社・花とゆめコミックス・1985年初版)、『オズ(OZ)(1)』(白泉社・ジェットコミックス・1993年21刷)、『獣王星(5)』(白泉社・ジェッツコミックス・2003年第1刷) 

★伊東愛子★ 
 1952年生。1973年、デビュー。90年代からは「いとうあいこ」とひらがな表記にしたようだ。  
 
※画像データ (左から)『良くんの四季(1)』(小学館・1977年第1刷)、『ハピィトォク』(朝日ソノラマ・1977年初版)、『母の神話』(白泉社・1979年初版)、『こねこのなる樹』(朝日ソノラマ・1981年初版)、『HURT』(秋田書店・1984年初版)、『セビリヤの午後』(新書館・1985年初版) 

★伊藤潤二★ 
 1963年生。1987年「月刊ハロウィン」2月号で第1回楳図賞に『富江』が佳作入選してデビュー。
 伊藤が楳図賞受賞作家だということを私がいつ知ったかは記憶にないが、最初の単行本が刊行された頃からぽつぽつと作品を読んでいた。ホラーというよりはナンセンスな味わいだと思ったが、大好きというほどの作家にはならなかった。しかし、当時ホラーを描く新人作家の中では一番読める作家で、続けて読んでいた。あまりにも不条理で飛躍する展開に笑ってしまうのは、1980年代に流行ったB級ホラー映画と同じで、結局は私の好みだったのだ。伊藤の独特の恐怖幻想の絵はそれだけでも見応えがあるが、ぜひスクリーンで見たいと思っていたところ、続々と映画やTV化されたのは、映像的なイマジネーションを誘発する類の作家だからだろう。何といっても美少女ホラー・クイーンを生んだ『富江』シリーズが有名だが、コメディ色の強い
『双一』や、シチュエーションを主とした『押切』のシリーズもレベルを落としていない。私は『墓標の町』『首吊り気球』『道のない街』などの短編が好きだが、よくぞこれほど突拍子もないアイデアを思いつくものだと感心しながら読んでいる。メアリー・シェリー原作の『フランケンシュタイン』ではきちんとした構成力があるところを見せたが、オリジナル長編は思いつき優先で、構成は放棄しているようにも見える。メジャー誌に描いた『うずまき』『ギョ』でもその姿勢が変わらないのは、ファンとしては嬉しい。 
 
※画像データ (左から)『地下室』(朝日ソノラマ・ハロウィン少女コミック館・1990年初版)、『脱走兵のいる家』(朝日ソノラマ・ハロウィン少女コミック館・JUNJIの恐怖コレクション@・1991年初版)、『墓標の町』(朝日ソノラマ・ハロウィン少女コミック館・潤二の恐怖夜話B・1994年初版)、『フランケンシュタイン』(朝日ソノラマ・ハロウィンCS・1994年初版)、『死びとの恋わずらい』(朝日ソノラマ・眠れぬ夜の奇妙な話コミックス・1997年初版)、『地獄星レミナ』(小学館・2005年初版) 

★井上智★ 
1938年生。高校時代から松本零士らと同人グループを作り、「漫画少年」に作品を投稿していた。1957年、中村書店の「ナカムラマンガシリーズ」から『原爆の悲劇』でデビュー。以後、3年ほどはこのシリーズから単行本を描き下ろしていたが、次第に雑誌に活躍の場を移す。やがて虫プロに入社し、手塚作品に関わるが、その後独立して「智プロ」を設立する。初期には「井上さとる」と名前がひらがな表記であった。 
 
※画像データ (左から)『海の非常線』(「野球少年」1959年9月号付録)、『白馬の騎士ロッキーナイト』(「たのしい四年生」1959年9月号付録)、『アパッチ牧場』(「冒険王」1961年1月号付録)、『大力まめ助』(「ぼくら」1960年2月号付録)、『魔神バンダー(1)』(マンガショップ・2010年初版)、『黄金バット(上)』(アップルBOXクリエート・2005年復刻) 

★井上雄彦★ 
 1967年生。1988年、手塚賞を受賞した『楓パープル』(「週刊少年ジャンプ」32号)でデビュー。デビュー当初は、本名の「成合雄彦」名で作品を発表していた。単行本では『カメレオン・ジェイル』(原作・渡辺和彦)の発刊時がそうであった(下の画像参照)。
 私が初めて読んだ井上作品は、
『スラムダンク』である。当時、子供に一番人気のあるスポーツが野球でもサッカーでもなく、バスケット・ボールであったのは、ひとえにこの作品のおかげである。私は積極的にスポーツまんがを読むことがないので、社会現象となるほどヒットしていたこの作品も、連載中にはまったく読んでいなかった。読んだのは、単行本が完結して1年ほど経った後だと思う。全巻まとめて購入して読んだのだ。遅ればせながら感動した。最終巻では、涙さえ滲んできた(笑)。連載当初はツッパリものとラブ・コメディものが合体したような作品であったのが、どんどんとバスケ・チームの人間ドラマへと深化し、作者の描写力も格段に進化していく。ちばてつやの『ハリスの旋風』のように、抜群の運動神経を持った主人公が、初心者ながら達人たちを相手に闘っていく小気味よさもさることながら、やはり作者のすべての登場人物に対する思い入れを熱く感じるのが魅力である。全31巻で、わずか4カ月あまりしか時間は経過しないが、常に登場人物の過去に向かってドラマは進み掘り下げられる。選手たちはそれぞれに十数年間のドラマを背負い、ゲームを闘っているのである。2004年には、『スラムダンク』が累計1億冊の刊行を突破したのを記念して、ラストから十日後を描いた作品を、廃校となった高校の黒板23面に3日間限定で発表したことも話題になった。吉川英治の小説『宮本武蔵』を大胆に脚色して描く『バガボンド』、また車イス・バスケを描く『リアル』、ともに新刊が待ち遠しい作品である。 
 
※画像データ (左から)『カメレオン・ジェイル(2)』(集英社・ジャンプスーパーコミックス・1990年初版)、『スラムダンク(4)』(集英社・ジャンプコミックス・1991年初版)、『BUZZER BEATER(2)』(集英社・1997年初版)、『バガボンド(1)』(講談社・モーニングKC・1999年初版)、『リアル(1)』(集英社・ヤングジャンプコミックス・2001年初版)、『ピアス』(集英社「週刊ヤングジャンプ」2001年49号に再掲載時の扉絵)

★井上英沖★
 1939年生。1959年、「おもしろブック」の『テレビ小僧』でデビュー。1986年没。 
※画像データ (左から)『遊星少年パピイ(3)』(アップルBOXクリエート・1997年刊)、『サンダー]』(「少年」1964年夏休み大増刊スリラーブック掲載時の扉絵)、『サンダー7』(「少年画報」1964年連載時の扉絵)、『狂った惑星』(「MYSTERY BOOK夢見る少年」掲載時の扉絵)、『宇宙パトロール・ホッパー』(「ぼくら」1965年3月号付録)、『ウルトラマン・第10話・新バルタン星人』(現代コミクス「ウルトラマン」1967年2月号初出をコスミック出版「バルタン星人」2009年刊で復刻) 

 ★岩明均★

 1960年生。上村一夫のアシスタントを経て、1985年、ちばてつや賞を受賞した『ゴミの海』(「モーニング」増刊「オープン」)でデビュー。
 私が最初に読んだ岩明作品は
『寄生獣』である。何度も面白いという評判は聞いていたのだが、タイトルは安っぽいグロテスクなSFのようであり、たまたま見かけた単行本の表紙の絵はヘタに見え、なかなか読む気になれなかった。結局、単行本が完結した時点で全巻まとめて読んだが、一気に読み切ってしまうほど面白かった。最初はSFコメディ的な要素が強いが、内容はどんどんと深化していき、表現技巧も含めて作者が進化していくさまが見てとれる。寄生獣というタイトルが人間を意味していることがわかるのは、ずいぶん後になってのことだ。おそらく、作者はこの作品を描きながら、自分でも無意識に配置していたピースが、後になってジクソーパズルのように見事に嵌まっていくという至福を味わったに違いない。名作の誕生にはそうした作者にも思いもよらない力が働くものである。それとは逆に、『寄生獣』の成功によって苦しくなったのが『七夕の国』だと思う。迷走した作品というわけでもないが、プラス・アルファのインスピレーションは何も感じられない。だが、この中に『雪の峠・剣の舞』などの歴史ものを描くきっかけを見つけたのなら幸いであった。その後、岩明の目は西洋に向けられ、『ヘウレーカ』を描き、現在『ヒストリエ』が連載中である。一見淡白に見える表現法で、『風子のいる店』に集う平凡な人物たちと同様に歴史上の人物を見つめて描いている。歴史年表の隙間に潜む膨大な日常を、作者は楽しんで想像しているのだろう。だから、それを読む私も楽しいのである。 

 

※画像データ (左から)『風子のいる店(4)』(講談社・講談社漫画文庫・1995年初版)、『骨の音』(講談社・モーニングKC・1994年12刷)、『寄生獣(10)』(講談社・モーニングKC・1995年初版)、『七夕の国(1)』(小学館・ビッグスピリッツコミックス・1997初版)、『雪の峠・剣の舞』(講談社・KCDX・2001年初版)、『ヒストリエ(1)』(講談社・アフタヌーンKC・2004年第1刷) 


ごろねこ倶楽部/まんがの部屋/あ行の作家(2)う・え・お

 ★植木金矢★

 1921年生。東映時代劇のポスターや小説などの挿絵・装画を描いていたが、作品としては1951年の『鞍馬天狗』(日昭館)がデビューとなるのだろうか。少年誌では53年に「痛快ブック」に連載した『風雲鞍馬秘帖』がデビューとなる。本名の「寺内鉄雄」、また「最上元・川口元郷・大道寺鉄・寺内新」名義の作品もある。少年誌では1950年代に「少年画報」を中心に活躍しており、『神変じごま』『三日月天狗』『おりづる剣士』などの作品を執筆していた。この頃はまんがと絵物語の中間のような作風であった。TVドラマ『風小僧』を絵物語化した作品の絵も担当した。「少年画報」時代の後期には、時代劇だけではなく青春物や西部劇も描いている。1960年代半ばに青年誌に進出し、「週刊漫画」などに数多くの短編を描いている。70年代の代表作としては、映画のコミカライズの『赤穂城断絶』『柳生一族の陰謀』がある。80年代には『宮本武蔵』などを描き、86年の『血汐舞』を最後にまんがから離れ、画家として活躍する。が、2004年に18年ぶりに『新選組』を発表し、以後、『幕末血風録・竜馬をかえせ』『明暗赤穂浪士・討入』を刊行した。2019年没。
 私は60年頃の植木作品は見ていたはずだが、あまり覚えていない。東映(に限らず)時代劇が好きだったので、スターの似顔絵をキャラクターに使用した絵物語やまんがは見ていたと思うが、作者までは覚えていなかった。山川惣治などの絵物語とは違う、こうしたスター似顔絵を使うジャンルの作品があると漠然と認識していたようだ。後に、植木が東映時代劇のポスターを描いていたことを知り、逆に昔見た作品の作者が植木だと気づいたのである。改めて読むと、少年誌に描いていた絵物語風の作品は雰囲気が懐かしく、『宮本武蔵』などは超一級の作品である。
 

※画像データ (左から)『三日月天狗』(「少年画報」1956年1月号付録)、『謎の怪剣士』(「痛快ブック」1956年2月号付録)、『剣光白頭巾』(「少年画報」1957年3月号付録)、『宮本武蔵(天の巻)』(弘済出版社・1984年初版)、『柳生一族の陰謀』(芳文社・1979年初版)、『闇の絵草紙・必殺血汐舞』(あき書房・1988年初版) 


★うしおそうじ★ 
 1921年生。1939年に東宝に入社し円谷英二に師事して特撮技術を学ぶ。その後、退社して、1947年、『探偵815号』(五月書房)でまんが家デビュー。「芝野巷児」「波良章」名義の作品もある。1960年にアニメや特撮ドラマを製作するピー・プロの社長となり、まんが家は引退し、数多くのTV番組を製作する。2004年没。 
 
※画像データ (左から)『おせんち小町』(講談社漫画文庫・1977年第1刷)、『朱房の小天狗(1)』(国書刊行会・1986年復刻)、『朱房の小天狗・夜光魔人』(国書刊行会・1980年復刻)、『どんぐり天狗』(「少年」1957年11月号付録)、『流星剣士』(「おもしろブック」1956年1月号付録)、『左近右近』(「週刊少年マガジン」1959年4月16日号付録) 

★内田美奈子★ 
 生年不詳。デビュー作不詳。単行本収録作品のうち、最も古いものは、1979年に「月刊セブンティーン」に掲載された『眠り姫の抵抗』である。 
 
※画像データ (左から)『百万人の数学変格活用』(朝日ソノラマ・1982年初版)、『DAY IN,DAY OUT(1)』(朝日ソノラマ・1983年初版)、『ナイフと封筒』(朝日ソノラマ・1983年初版)、『赤々丸(5)』(新書館・1987年初版)、『BLIND』(新書館・1987年初版)、『BOOM TOWN(2)』(竹書房・1994年第1刷) 

 ★内田善美★

 1953年生。1974年『なみの障害物レース』(「りぼん」)でデビュー。およそ10年間に29作を発表し、9冊の単行本(画集などは別)を刊行して引退。自作の復刻・重版を認めていないらしく、新刊が刊行されることは絶望的である。
 私が最初に読んだ内田作品は
『ひぐらしの森』だった。少女まんがらしからぬ表紙絵に惹かれたのだ。心理の微妙な揺れを描くのが得意な作家は他にも多いので、ストーリーそのものには驚きはしなかったが、表題作の絵の雰囲気は好きになった。次の連載作『空の色ににている』『かすみ草にゆれる汽車』では、その絵はますます緻密になっていき、ストーリーも独特のテンポで思索的な雰囲気が漂うようになってきた。その後、それ以前の作品集『星くず色の船』『秋のおわりのピアニシモ』を読んだが、内田の新作を見かけることはなかった。ハードカバーの4冊の単行本が刊行されていたと知ったのはずっと後になってからである。『草迷宮・草空間』は娯楽性もあるファンタジーで、内田のその後の方向性を感じさせた。だが、内田は全3巻の長編『星の時計のLiddell』によって作家として完結してしまった。確かに絵もストーリーもひとつの方向としては完結している。引退の理由は知らないが、これが内田の最後の作品となるのなら、それはそれで本望だったと思う。それほどの作品である。

 
※画像データ (左から)『秋のおわりのピアニシモ』(集英社・りぼんマスコットコミックス・1978年初版)、『かすみ草にゆれる汽車』(集英社・ぶーけコミックス・1981年初版)、『空の色に似ている』(集英社・ぶ〜けコミックス・1981年第2刷)、『ひぐらしの森』(集英社・ぶーけコミックス・1980年初版)、『草迷宮・草空間』(集英社・1995年第16刷)、『星の時計のLiddell(1)』(集英社・1987年第8刷) 

 ★楳図かずお★

 1936年生。1955年『森の兄弟』(水谷武子と合作)『別世界』(トモ・ブックス)でデビュー。『14歳』以降、ほとんど執筆はしていない。
 私が最初に注目した楳図作品は、やはり「少女フレンド」に連載していたホラーまんがだった。
『ママがこわい!』『まだらの少女』『紅グモ』『黒いねこ面』『赤んぼ少女』など、今度は何を題材にするのかと楽しみにしていた。その頃、貸本で読んだ作品では『ガモラ』が印象に残っている。貸本屋というのは全巻が揃っているとは限らないので、途中までしか読めなかったと思っていたのだが、じつは未完作品だった。1998年に復刻されるまで、完結部分(とりあえずの完結だが)を読むことはできなかった。楳図は少年誌にも進出し、『半魚人』『ひびわれ人間』などを発表したが、最も驚いたのは『ウルトラマン』の連載だった。確かTV放映と同時ぐらいの連載開始で、それほど情報はなかったと思うが、ヒーロー物を楳図が描くのが意外だったのだ。しかし楳図版は、後に描かれた単純なヒーロー物とは違い、ドラマ性の強い佳作になったと思う。他にも『猫目小僧』『おろち』などのシリーズが少年誌掲載作品だが、『アゲイン』からスピンオフしたギャグまんが『まことちゃん』は、あまり読む気になれなかった。私が一番好きなのは、「ビッグコミック」に発表した短編作品群で、『イアラ』に異色短編として収録されている。長編作では『漂流教室』が時空を超えるほどの母子の絆を描いて感動的であった。『わたしは真悟』は展開に矛盾があり、『14歳』は失敗作だと私は思っている。その間に描かれた『神の左手悪魔の右手』のような連作シリーズのほうが楳図の描き方には合っていると思う。初期作品の復刻本が小学館クリエイティブから続々と刊行され、手軽に読めるようになったのは喜ばしいことである。

 
※画像データ (左から)『森の兄弟/底のない町』(小学館クリエイティブ・2005年復刻)、『ガモラ』(太田出版・QJマンガ選書・1998年初版)、『うろこの顔』(朝日ソノラマ・サンコミックス・1973年3版)、『イアラ(5)蟲たちの家』(小学館・ゴールデンコミックス・1974年初版)、『ウルトラマン(1)』(朝日ソノラマ・サンコミックス・1978年初版)、『猫目小僧(2)』(朝日ソノラマ・サンコミックス・1982年初版)

★浦沢直樹★ 
 1960年生。1983年、別冊ビッグコミック「ゴルゴ13」の『BETA!!』でデビュー。
※画像データ (左から)『パイナップルARMY(8)』(小学館・1988年第1刷)、『YAWARA!(5)』(小学館・1988年第1刷)、『MASTERキートン(1)』(小学館・1989年第1刷)、『Happy!(1)』(小学館・1994年第1刷)、『MONSER〔モンスター〕(1)』(小学館・1995年第1刷)、『20世紀少年(1)』(小学館・2000年第1刷) 

 ★浦野千賀子★

 1946年生。デビュー作は不明。すでに1960年代の前半には、若木書房の貸本「ひまわりブック」などに数多くの作品を発表していたと思う。
 私は、貸本時代から名前は知っていたが、作品を読んだ記憶はない。ごく普通の少女まんがで、私が読みたくなるプラス・アルファを感じなかったのだと思う。初めて読んだのは
『アタックbP』である。私はあまりスポーツまんがを読まず、まして「スポ根もの」と呼ばれる作品は敬遠していたのだが、中学時代、同級生のバレーボール部の女の子から新刊が出るたびに借りて読み、はまってしまったのだった。線の細い絵が、かえってスポ根もの特有の過剰な力みを感じさせず、私の肌に合ったのかも知れない。といって、他の浦野作品をとくに好んでいたわけではないが、私は動物ものに弱いので、犬の話を集めた作品集『ゴンベエは死んだ』は好きな作品である。『アタックbP』が大ヒットしてしまったため、以降はスポーツものが多いが、当時としては珍しい女医を主人公としたまんが『ドクター・ジュン子』などもあり、もっとさまざまな題材の作品を描けたはずの作家だと思う。 

 

※画像データ (左から)『アタックbP(4)』(集英社・マーガレットコミックス・1969年初版)、『がめつくシュート!』(集英社マーガレットコミックス・1972年初版)、『かがやけ!フルターン』(集英社・マーガレットコミックス・1973年初版)、『ゴンベエは死んだ』(集英社・マーガレットコミックス・1974年初版)、『ドクター・ジュン子』(集英社・マーガレットレインボーコミックス・1976年初版)、『マディの冒険』(笠倉出版社・サクラコミックス・1979年初版) 


★江口寿史★ 
 1956年生。1977年、「週刊少年ジャンプ」の『恐るべき子供たち』でデビュー。第2作の『8時半の決闘』が赤塚賞に準入選となって、ギャグまんがを描くようになる。 
※画像データ (左から)『すすめ!!パイレーツ(11)』(集英社・1981年第1刷)、『GO AHEAD!!』(集英社・1983年第8刷)、『ひのまる劇場(1)』(集英社・1983年第9刷)、『ストップ!!ひばりくん!(4)』(集英社・1984年第1刷)、『「エイジ」』(集英社・1985年第1刷)、『NANTOKANARUDESHO!』(角川書店・1988年初版) 

★遠藤淑子★ 
 1960年生。同人誌活動を経て、1985年、「別冊花とゆめ」秋号の『慶長スラップスティック』でデビュー。 
 
※画像データ (左から)『スイートホーム』(白泉社・1989年第1刷)、『だからパパには敵わない』(白泉社・1993年第1刷)、『ラッコはじめました』(白泉社・1993年第1刷)、『ファミリーアワー』(白泉社・2004年初版)、『解決浪漫倶楽部』(白泉社・2004年初版)、『スマリの森』(白泉社・2002年第1刷) 

 ★大島弓子★

 1947年生。1968年、『ポーラの涙』(「週刊マーガレット」春の増刊号)でデビュー。
 私が最初に読んだ大島作品は
『綿の国星』だと思うが、前後して旧小学館文庫の『雨の音がきこえる』から始まる作品集を揃えて読んでいた。その頃すでに独特な作風ができていて、面白くかつ深いと思ったが、何となく読みづらさも感じて、そこでストップしてしまった。再び大島作品を読むのを再開するのは、映画化された『四月怪談』を見て、その原作を読みたくなったからである。時期的にはそれほど離れていなかったかも知れない。すでに大島がよしもとばなななどの小説に与えた影響というものが世に喧伝されていたが、私としてはドストエフスキーの『罪と罰』をまんが化した『ロジオンロマーヌイチ・ラスコーリニコフ』を読んで、韻文的だと思っていた大島作品がじつは散文的に優れていることを改めて認識した。『毎日が夏休み』『金髪の草原』の映画や『秋日子かく語りき』のTVドラマ(『ちょっと待って、神様』)など、大島作品を原作とした映像作品がみな佳作となっているのは、脚本化してもその魅力が失せないからであろう。映像化された作品は、さすがに目をつけられるだけあって、私も好きな作品である。他には『あまのかぐやま』『ダリアの帯』など、1980年代に描かれた短編群が私の好みに最も適っている。猫好きの私にとっては、大島が飼い猫との生活を描いた『サバ』シリーズ『グーグーだって猫である』なども忘れることはできない。それらの作品を読んで、私的体験と重ね合わせて密かに涙するという、おそらく少数派の読者のひとりである。

 

※画像データ (左から)『ミモザ館でつかまえて』(朝日ソノラマ・サンコミックス・1975年3版)、『野イバラ荘園』(朝日ソノラマ・サンコミックス・1975年初版)、『ほうせんか・ぱん』(主婦の友社・ロマンコミック自選全集・1978年初版)、『綿の国星』(白泉社・花とゆめコミックス・1980年11版)、『四月怪談』(朝日ソノラマ・サンコミックスストロベリーシリーズ・1987年初版)、『グーグーだって猫である』(角川書店・2000年初版) 


 ★大城のぼる★
 1905年生。1931年、『学年別童話漫画』(全6冊・元文社)でデビュー。同作と翌年の『漫画チンポン』は「栗本六郎」名義である。1998年没。 
 
※画像データ (左から)『火星探検』(旭太郎原作・晶文社・1980年復刻)、『汽車旅行』(小学館クリエイティブ・2005年復刻)、『愉快な鉄工所』(小学館クリエイティブ・2005年復刻)、『怪球コンペト号』(集英社「小学六年生」1958年10月号付録)、『白鳥の湖』(講談社「なかよし」1956年3月号付録)、『かい人黒マント』(集英社「小学三年生」1958年8月号付録) 

★太田じろう★ 
 1923年生。1941年、『イソップまんが』でまんが家としてデビュー。「太田二郎」「おおた・じろう」と表記することもある。1982年没。 
※画像データ (左から)『おせんとコン平』(中村書店・1954年刊)、『水戸黄門の代官退治』(「冒険王」1955年3月号付録)、『がんばれガン太(1)』(アップルBOXクリエート・2004年復刻)、『げんこつ漫遊記』(「漫画王」1957年10月号付録)、『弥次喜多膝栗毛』(曙出版・1969年刊)、『こりすのぽっこちゃん』(「こばと」1962年2月号の扉絵)

★大友朗★ 
 1926年生。(コメント予定)
 

※画像データ (左から)『雪の怪人』(若木書房・刊行年不明)、『冒険クロンボ島』(きんらん社・刊行年不明)、『日の丸くん(1)』(サン出版・コミックペット・1981年初版)、『お山のお力ちゃん』(講談社「少女クラブ」1956年1月号付録)、『宇宙珍平』(集英社「おもしろブック」1959年5月号付録)、『出生だんご山』(講談社「少年クラブ」1959年3月号付録) 


 ★大友克洋★

 1954年生。1973年『銃声』(「漫画アクション増刊」プロスペリール・メリメ原作)でデビュー。『アキラ』以後、映画業界のほうに行ってしまったようだ。
 私が大友を知ったのは、作品集
『ショート・ピース』が刊行されたときだ。読んでみて、すごい作家がいると同人仲間で話題となっていたことを思い出した。話題の半分は絵であり、半分はストーリーであった。絵もストーリーも斬新な作家など、手塚治虫以来のことではないか! 以後、多くの亜流が誕生したが、大友自身はマイ・ペースに寡作であり続け、その魅力が亜流の中に埋没しそうに思えたとき、『Fire−ball』が話題になった。これはもうSFまんがを根本的に変えそうな予感がしたが、作品自体は未完といっていい終わり方をしている。アトムをリスペクトした『Fire−ball』でできなかったことは、後に鉄人をリスペクトした『アキラ』で成し遂げたといってよいだろう。その間に『童夢』があるが、一般に大友の認知度が上がったのはこの作品からだと思う。雑誌連載時の形を私は見ていないが、大幅に加筆して刊行した単行本は、日本のSFまんがを確かに変えた。延いては、世界のSF映画にまで影響を及ぼしていくことになる。私はこれからも大友の作品を、原作だけであってもアニメーションであっても実写映画であっても追いかけていくと思うが、いずれまた紙のまんがを描いてほしいとは願っている。 

 

※画像データ (左から)『大友克洋自選作品集1・ショート・ピース』(奇想天外社・奇想天外コミックス・1979年3版)、『ハイウェイ・スター』(双葉社・アクションコミックス・1979年初版)、『GOOD WEATHER』(綺譚社・1982年4版)、『BOOGIE WOOGIE WALTZ』(綺譚社・1982年初版)、『童夢』(双葉社・アクションコミックス・1983年初版)、『AKIRA(1)』(講談社・1984年第1刷) 


★岡友彦★ 
 1917年生。1990年没。1950年代、少年誌少女誌に絵物語を描いて活躍したが、別名も多く使っていたらしい。まんがである『ロケット天狗』を描いた「旭不二雄」も岡の別名と言われている。大人誌に描くときは「歌川大雅」の名を使っていたが、60年代以降はそちらへと移行し、主にエロまんがを描いていた。 
 
※画像データ (左から)『白虎仮面』(桃源社・冒険活劇ロマン・1975年刊)、『少年魔王』(集英社「おもしろブック」年不明10月号付録)、『ロケット天狗』(少年画報社「少年画報」1958年9月号付録)、『流星仮面』(少年画報社「少年画報」1959年4月号付録)、『大都会]』(アップルBOXクリエート・2008年復刻)、『飛竜夜叉(上)』(アップルBOXクリエート・2012年復刻)

★岡崎京子★ 
 1963年生。1984年、セルフ出版(白夜書房)よりデビュー。1996年、轢き逃げに遭って重傷を負い、作家活動は休業となっている。
※画像データ (左から)『ジオラマボーイパノラマガール』(マガジンハウス・1989年第1刷)、『pink』(マガジンハウス・1989年第7刷)、『ROCK』(JICC出版局・1991年初版)、『カトゥーンズ』(角川書店・1992年初版)、『ヘテロセクシャル』(角川書店・1995年初版)、『私は貴兄のオモチャなの』(祥伝社・1995年第1刷) 

 ★岡田史子★

 1949年生。1967年、『太陽と骸骨のような少年』(「COM」2月号)でデビュー。同人誌時代は本名の「高田富美子」で作品を発表していたという。2005年没。
 手塚治虫が「鉄腕アトム・ファンクラブ」を発展解消し、『COM』を創刊したとき、早くも2号に岡田史子が登場したのは衝撃的だった。わずか7ページの作品で、4分の1に縮小されての掲載だったが、それまで見たことがないまんがであった。思春期の少年少女の文学や哲学への志向を刺激しつつ、大胆で感覚的な表現で語られるまんがは、従来のまんがとは別物に思えた。当時、詩的な、あるいは文学の香りを持つまんがというのが、わずかながら生まれ始めていた時期ではあった。おそらく、全国の無名の同人作家たちによって、そうした傾向の作品がそれぞれに試行錯誤されて根を張っていたのだと思う。だが、花を咲かせたのは、ひとり岡田史子であった。以後、プロ・アマ問わず岡田の亜流が蔓延した。若年層の自己表現の手段として、岡田のまんがは魅惑であり、容易に手が届きそうに見えたのだろう。だが、すべては亜流か、もしくは単なる自己満足の作品に終わっていた。亜流の底の浅さに比べて、わずか20歳前後の岡田がどうしてそこまで深いツボを突くことができたのか不思議だが、そこが天才の所以であろう。『COM』掲載作品では、作品ごとに絵柄を変え、文学や美術、歴史や音楽といった幅広い題材で、正鵠を射た作品を描いていた。当時、私はその1作1作に魅了されていた。どの作品も好きだが、
『夢の中の宮殿』『赤い蔓草』『墓地へゆく道』『サンルームのひるさがり』などがとくに印象が強い。ある事件以後、岡田のまんがに対する意欲が失せたのか、一時復活した作品に往年の輝きはなかった。同人誌時代の作品、『COM』掲載の作品、それ以後の作品と見てみると、『COM』に掲載した作品群が、突出した輝きを放っている。汲めば涸れる才能だったことは、岡田亡き今、証明されてしまったわけだが、岡田が『COM』に作品を発表していた4年間、私は確かにこんこんと湧き出す天才の泉に見惚れていたのである。 

 

※画像データ (左から)『ガラス玉』(朝日ソノラマ・サンコミックス・1976年初版)、『ほんのすこしの水』(朝日ソノラマ・サンコミックス・1978年初版)、『ダンス・パーティー』(朝日ソノラマ・サンコミックス・1979年初版)、『ODESSEY1966〜2003・岡田史子作品集・episode1ガラス玉』(飛鳥新社・2003年初版)、『ODESSEY1966〜2003・岡田史子作品集・episode2ピグマリオン』(飛鳥新社・2004年初版)、『岡田史子作品集(2)ほんのすこしの水』(NTT出版・1992年初版) 


★岡野玲子★ 
 1960年生。1982年、「プチフラワー」3月号の『エスター・プリーズ』でデビュー。 
※画像データ (左から)『ファンシイダンス(9)』(小学館・1990年第1刷)、『ディアーヌ・ド・ロゼの陰謀』(新書館・1987初版)、『両国花錦闘士(1)』(小学館・1990年第1刷)、『コーリング(1)』(潮出版社・1993年初版)、『陰陽師(1)』(スコラ・1994年第1刷)、『妙技の報酬』(小学館・2000年初版) 

★小田ひで次★ 

 1962年生。1992年に『拡散』により、「月刊アフタヌーン」四季賞でデビュー。(以下コメント予定) 

 

※画像データ (左から)『拡散Volume@』(講談社・アフタヌーンKCDX・1995年初版)、『拡散VolumeA』(講談社・アフタヌーンKCDX・1998年初版)、『クーの世界(1)』(講談社・アフタヌーンKC・2000年初版)、『夢の空地』(飛鳥新社・2005年初版)、『ミヨリの森』(秋田書店・2005年再版)、『おはようひで次くん!(1)』(エンターブレイン・2010年初版) 


★小畑健★ 
 1969年生。1985年、『500光年の神話』で手塚賞に準入選、86年に『CYBORGじいちゃんG』で佳作入賞となる。アシスタント経験を経て、「週刊少年ジャンプ」に『CYBORGじいちゃんG』を連載してデビュー。当時は「土方茂」というペンネームだった。  
 
※画像データ (左から)『CYBORGじいちゃんG(3)』(集英社・1990年第3刷)、『人形草紙あやつり左近(3)』(集英社・1996年第1刷)、『ヒカルの碁(1)』(集英社・1999年第1刷)、『DEATHNOTE〈デスノート〉(5)』(集英社・2005年第1刷)、『BLUE DRAGONラルΩグラド(4)』(集英社・2007年第1刷)、『BAKUMAN[バクマン]。』(集英社・2009年第1刷) 

★小花美穂★ 
 1970年生。1990年、「りぼん」秋の増刊号の『窓のむこう』でデビュー。 
 
※画像データ (左から)『こどものおもちゃ(3)』(集英社・りぼんマスコットコミックス・1996年第1刷)、『パートナー(1)』(集英社・りぼんマスコットコミックス・2000年第1刷)、『アンダンテ(1)』(集英社・りぼんマスコットコミックス・2001年第1刷)、『あるようでない男』(集英社・コーラスクイーンズコミックス・2003年第1刷)、『POCHI』(集英社・りぼんマスコットコミックス・2003年第1刷)、『Deep Clear−ディープ・クリア−』(集英社・2010年第1刷) 

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